(WE91Bタイプ)300Bシングルアンプの製作

はじめて300Bシングルアンプを製作しようと思い立ちました。どうせ作るなら世に音がいいといわれているWE91Bタイプのアンプがよかろうと思いましたが、試しに作るアンプですのでなるべく金をかけずにとの思いから、中古の部品を使ったために思わぬトラブルもあり、完成までは茨の道でした。
さてさて、完成したWE91Bもどきアンプの音とはいかなるものなのか?

【WE91Bとは】

WE91B

ウエスタン・エレクトリックの91B型アンプはWE300Bを使用したトーキーシステムのシングルパワーアンプアンプで、ウエスタン・エレクトリックの増幅器の中で最も有名なものです。
WE91Bは最高の音がするなどと雑誌の記事でよく見かけますので、それならば91B型もどきのアンプを作ってその音質を確認しようと思った次第です。
巷ではWE310A-WE300B-WE274BとWEの真空管を使用していないものは91B型にあらずといわれてもおりますが、それはお金持ちのたわごとと受け流し、「無銭と実験」の趣旨とまあどんな音がするのか試しに作ってみるかという意味から、普通に売られている安い真空管や中古のトランス、部品を使って製作することにしました。
結論を先に言っちゃって申し訳ないのですが、完成したアンプのこの音を聞けばウーン納得、自分が作ったアンプというかなりの思い込みがあったとしても、そこそこの部品と素人技術で作ったものでさえ、豊かな低音と漂う厚みのある中音、少しハイ落ちながら柔らかで滑らかな高音など「他のアンプはもうイリマセン!!」と思えるほどのいい音が出てきます。
WE91B型アンプの回路技術は、当時のWEが豊富な資金にものをいわせ、世界最高の技術で開発されたものといわれています。いくら現代のひねくり回した最新の回路のアンプでさえ、忠実度等では勝っても音楽的に聴こえるアンプはWE91B型アンプの以上のアンプにはそうお目にかからないと思われます。そういった意味で、真空管アンプについては、WEが70年以上も前に結論を出してしまったといっても過言ではありません。そして今後とも、こと真空管アンプに関しては、WEを凌駕する技術が生まれることはないと思われます。

【300Bシングル(WE91B型)の回路図】

回路図

WE91Bタイプの回路図は「無線と実験」誌やインターネットなどに数多く掲載されています。持ち合わせの部品を勘案して回路を検討しました。
「無銭と実験」の実践から、トランス類はすべて中古です。出力トランスは91B型を製作するために秘蔵していたタムラのF-2007、チョークは同じくタムラのA-4004、電源トランスはメーカー不明の怪しいもの。そしてこだわったのがこれまた怪しい中古のマイカのカップリングコンデンサーとこれまた中古のボックス型大容量フィルムコンデンサー。これら中古品を用いてできるだけ安く仕上げるようにしました。
また、掲載されている色々な回路図をみると初段の310AのEpやEsgそれにEkが、高いのから低いのまで色々あり、判断がつかなかったので、まずは中間の値をとることにしました。

【シャーシ】

シャーシ

木製枠のシャーシをヤフオクで安く手に入れたので、これにしたのですが、実物のWE91Bを考えると弁当型のアルミシャーシの方が良かったのではないかと反省。
木枠もあまり状態がいいとはいえません。
外形は440×340×60で内寸は380×280。
シャーシの加工が自作する上で最大の難関。このシャーシはアルミ天板の厚さが3mmもあるので、加工がかなり困難であることを覚悟しなければならないようです。

【部品配置の検討】

部品の配置

シャーシの上にトランスや真空管類を置いて、配置の検討をしました。あーでもない、こーでもないと色々と検討してみましたが、配線のしやすさやバランスなどから、結局変わり映えのしない配置になってしまいました。

後で思ったのですが、配線が込み合うドライバー管の配置には余裕を持たせるべきでした。

【配置の図面を書く】

配置図面

フリーのCADソフトJWCADを使ってパソコンで配置図面を作りました。JWCADは建物設計用の高度なCADソフトですが、真空管アンプの配置図面には、丸や四角ぐらいしか使わないので、CADソフトの難しい技術をマスターしなくても、そこそこ簡単に正確な図面を作ることができます。
トランスやソケットなど同じものは、1つを最後まで書いてしまってからコピーして配置していくと効率的です。
図面上で配線の検討ができるように、ラグ板なども書きました。

【シャーシの加工と塗装】

加工塗装

いよいよシャーシの加工。作成した図面を両面テープで貼り付け、図面の上から穴を開けるセンターにポンチを打ちます。図面を剥がしてからポンチ穴を頼りにドリルやホルソー、ジグソーなど電動工具を駆使して加工しました。
これも反省ですが穴あけ後に部品が取り付けられるか必ず確認をする必要があります。これをしなかったために塗装後のシャーシを再加工しなければならないハメになってしまったのです。
また、ポンチ穴が精度を決めるので、正確に打つこととポンチの安物はダメというのが反省です。1日かけてやっと穴あけを完了。ガバイ疲れました。

そして塗装は意外と難しく、上手になるには何度も実践してコツをつかむしかないようです。
塗装する前に耐水ペーパーで磨きました。最初、目の粗いので磨き、次に細かいの仕上げます。
アルミなのでメタルプライマースプレーで下塗りをします。その後スプレー塗料を2度塗りしました。天板はハンマートーンを塗りましたが、後で判ったことですが、ハンマートーンは1度塗りが原則だそうです。2度塗ったので独特のチジミ模様がなくなってしまいガックリです。これは残念な失敗ですが、いまさらどうしようもありません。

【シャーシの組み立て】

部品取付け

塗装が乾いたところで、仮に木枠に取り付けて状態を確認します。
ここで310Aのグリッドを配線する穴を開けていないことに気づき、再度その穴あけ作業をしていて塗装面を傷つけてしまいました。トホホ!
小物部品を取り付けてみたところです。ところが電源ソケットの穴を若干大きく開けすぎていて、少し隙間ができています。真空管のソケットのねじ穴も若干ずれているところがあり、修正に苦労しました。
小物部品を取り付けた裏面。トランスの四角い穴がきれいな四角になっていないのが判ります。もう少し丁寧な作業をすればよかったと反省。
この時点ではヒーター定電圧用の3端子レギュレーターを取り付けています。
配線するときに分かったのですが、ボリュームと310Aのソケットの間隔が狭過ぎたため、配線に苦労し、見た目も窮屈になってしまいました。

【配線とスイッチオン・片チャンネルが暴走】

配線はらわた

苦労の末やっと配線を済ませ、誤配線がないか確認の上、恐る恐る電源を入れました。(ドキドキ!!)
すぐ各部の電圧を確認しましたが、アレー、右チャンネルは正常なのに左チャンネルの動作が変??
左チャンネルのバイアス電圧が低く、過大なプレート電流が流れています。バイアス抵抗を測定しましたが、どちらも1kΩで不良ではありません。300Bのヒーター電圧はどちらもきっかり5Vでこれも正常です。どうして片側だけ暴走するのか見当がつきません。
真空管を差し替えても左チャンネルの暴走は同じで真空管の不良ではないようです。ウーン!よくわからない。悩ましい??
よくよく考えてみますと過大電流が流れるということは何らかの原因でバイアス電圧が低くなっているということです。
電源トランスのフィラメント端子の絶縁を図ったところ、原因が判りました。何と左側300Bの7.5Vのヒーター端子と310Aの10Vヒーター端子の絶縁が不良です。310Aの10Vヒーターのアースへリークしていました。中古トランスの絶縁不良には注意すべきです。

【電源トランスの交換と調整】

配線はらわた2

中古トランスはこれがあるから考えものです。いつまでガックリしていても何ら解決にはならないので、気持ちを切り替え、不良トランスを交換するため早速通販で電源トランスを購入しました。
新しいトランスは小型のため取付け穴の再加工と7.5Vの端子がないので、3端子レギュレーター(300Bフィラメントを定電圧化するためのもの)の取り外し、またハムバランサー用の100Ω(50Ωがいいのだけれども手持ちがなかった)VRの取り付け、PLランプの変更などの手直し作業を済ませました。
「よーし!」と期待をこめてスイッチオン
今度は各部の電圧は正常なのでホッと一安心。
ところがスピーカーにつなぐと、ハム音がひどい!ハムバランサーを調節しても取れません。とりあえず音が出るかCDの信号を入れてみました。
ムムッ何ともいえぬスバラシイ音が出てくるではないか。怪しい中古のマイカのカップリングコンデンサーの働きもあるかもしれんが、「これはいいゾー!よーし!このハム音を何とかすればいいアンプになると、まずはB電源に40μFのコンデンサーを追加してみましたが心持減ったかなーという感じで音が少し硬くなった感じもします。原因はB電源のリップルではなかったのです。
原因は感度が高い310Aにあるようなので、思い切ってアースラインと310Aの部品配置を見直しました。
アースポイントを変更して1点アースを徹底します。
またトランスから310Aのヒーターまでの線をグリグリと撚って配線しました。
その結果、ハム音は驚くほど減って高能率のアルテックスピーカーで聴いてもほとんど気にならないレベルになりました。

【ドライバー管310Aと同等のロシア製10Ж12Cでの音】

ロシア製

300BはJJ製しか持ち合わせがありませんので、出力管を色々と差し替えて音を確認することができません。ドライバー管を差し替えての音質評価になります。
310A同等管のロシア製10Ж12C(310A同等管)での音ですが、チェロの胴鳴りやピアノ曲ではピアノ線のビーンと響く音、それにいぶし銀のブラスの音、またビロードを思わせる弦楽器の音。ウフフ!たまらないようないい音がします。巷で91Bタイプがいいと騒がれる理由がなんとなく分かります。

【10Ж12Cを6C6に変更した音】

6C6

WEでは310Aが手に入らない場合は6C6でもかまわないと聞き及んでいます。
そこで、310Aのヒーター10Vを6.3Vに変更し6C6を挿して音だしをしてみました。
音の傾向はほとんど変わりませんが、中域の張りが少しなくなり大人しくなったような感じがします。
コスト的には、わざわざ高価なWE310Aを購入しなくても6C6でも十分いけることが分かりました。
むしろクラシック音楽はこちらがいいかもしれません。

【WE310Aでの音】

WE310A

WE310Aの音を聴きたくて、オークションでWE310Aを手に入れました。夢のWE300Bは高価すぎて、とても購入することはかないません。せめてWE310Aなりとも手に入れオリジナルの91Bに近づけようとの考えです。
で、WE310Aの音ですが、うーん!これがWEの音かと感激したかったのですが、ロシア製とそれほど音質に変化はないと思われました。

WE310Aは特に信頼性があるように聞き及んでいますが、音質面ではロシア製でも6C6でも十分満足できる音が出てきます。

回路が優れていますのでどのドライバー管でもいい音がしますが、コスト的には6C6、ロシア製でほぼ満足、金持ちの方はWE310Aということでしょうか。